私たち日本人にとって「塩」はとても身近な調味料です。味噌汁、漬物、醤油、麺類…食卓のほとんどの料理に含まれているため、「塩分を控えましょう」と言われても、正直どうすればいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。
さらに最近では「減塩=健康に良い」というイメージが浸透しすぎて、SNSなどでは「塩は悪者」「とにかく薄味にすればいい」という極端な情報も目立ちます。
でも―― 塩(=ナトリウム)は本来、命を維持するために欠かせない栄養素。完全に悪者ではありません。
栄養士の立場から、正しい塩分との付き合い方を「科学的に」「でも分かりやすく」解説します。
◆ 食塩の正体って?「ナトリウム+塩素」のセット
普段料理に使っている「食塩」の主成分は 塩化ナトリウム(NaCl)。
このうち 健康に関係するのは “ナトリウム” です。
成分 | 体内での役割 |
---|---|
ナトリウム(Na) | 血圧・水分バランスの調整/神経や筋肉の伝達 |
塩素(Cl) | 体液の成分/消化液の材料など |
つまり「塩=ただの味付け」ではなく、本来は 身体の機能を保つための重要なミネラルなんです。
◆ 厚労省とWHOが定める「1日の塩分目安」
対象 | 1日あたりの推奨量 |
---|---|
日本(厚労省):男性 | 7.5g未満 |
日本(厚労省):女性 | 6.5g未満 |
WHO(世界基準) | 5g未満 |
実は日本の推奨量は世界よりもやや緩め。
なぜなら「味噌・醤油文化」が根付いており、完全に5g以下に抑えるのは現実的に難しいからです。
◆ 実際の日本人はどのくらい摂っている?
厚労省の調査によると…
男性:平均10.9g/女性:9.3g
つまり 推奨量より毎日2〜3gオーバーしているのが現実です。
◆ どこで塩分を摂りすぎているの?
「しょっぱいものを食べ過ぎてるわけじゃないのに…」と思いますよね。
実は “見えない塩分” が私たちの食生活に潜んでいます。
食品 | 塩分量の目安 |
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インスタント味噌汁1杯 | 約1.5g |
醤油 大さじ1 | 約2.6g |
うどん1玉(汁まで) | 約5〜6g |
食パン1枚 | 約0.8g |
ハム1枚 | 約0.5g |
「パン+ハム+スープ」だけで 1食3〜4g を超えてしまうことも。
自分では「薄味にしてるつもり」でも 加工食品や外食で簡単にオーバーしてしまうのです。
◆ 減塩の誤解:「味を薄めればいい」は間違い!
よくある失敗パターンは
「料理の塩や醤油を半分にして、ただ味を薄くする」
これでは 味気なさ・満足感の低下 → 結果的に食べ過ぎになることも。
栄養士がおすすめするのは “味をぼかさず、輪郭を立たせる減塩法”。
✅ 今日からできる減塩テク
- “かける”より“つける”(お浸しに醤油をかけるのではなく、ちょんっとつける)
- だし・昆布・鰹節・鶏ガラで旨味を補強
- レモンやお酢など酸味で味のキレを出す
- ごま・青じそ・生姜・七味など香りで満足感UP
◆ まとめ:塩は「悪者」ではなく「パートナー」
塩分は 摂りすぎれば血圧やむくみの原因になりますが、
不足すれば脱力感・めまい・熱中症リスクも上がります。
大切なのは「完全に減らす」ことではなく、
“自分の食生活の中で、どこに塩が隠れているかを知り、賢くコントロールする”こと。
栄養士としてお伝えしたいのは…
塩=敵ではありません。
味方につけることが、健康の近道です。