地震や台風、大雨などの自然災害は、いつ起こるかわかりません。
災害への備えというと、「非常食を買っておかなければ」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、非常食を購入して保管したままにしていると、
「気づいたら賞味期限が切れていた」
「非常時に初めて食べたら、口に合わなかった」
「家族の人数に対して、備蓄量が足りなかった」
といったことも起こります。
そこで、日常生活に取り入れやすい備蓄方法として知っておきたいのが**「ローリングストック」**です。
今回は管理栄養士の視点から、ローリングストックの基本的な考え方と、災害時にもできるだけ栄養バランスを保つための食品選びについて解説します。
ローリングストックとは?
ローリングストックとは、普段から食べている食品を少し多めに購入し、食べた分だけ新しく買い足していく備蓄方法です。
「備える → 食べる → 買い足す」を繰り返すことで、家庭に一定量の食品を確保しておくことができます。
従来の非常食のように「災害時のためだけに長期間保管する」という考え方ではなく、日常生活の延長線上で災害に備えられるのが大きな特徴です。
たとえば、普段からパックご飯を食べる家庭なら、いつもより少し多めに購入しておきます。
古いものから順番に食べ、食べた分を次の買い物で補充します。
缶詰やレトルト食品、乾麺なども同じように管理すれば、特別な防災食を大量に用意しなくても、自然に食品備蓄を続けることができます。
なぜローリングストックが必要なの?
大規模な災害が発生すると、スーパーやコンビニに商品が届かなくなったり、水道・電気・ガスなどのライフラインが停止したりする可能性があります。
道路や物流網が被害を受ければ、「お金があれば食料を買える」とは限りません。
そのため、災害が発生してから準備するのではなく、平常時から家庭で一定量の食料と飲料水を確保しておくことが重要です。
また、ローリングストックにはもう一つメリットがあります。
それは、普段食べ慣れている食品を災害時にも食べられることです。
災害時は生活環境が大きく変化し、心身ともに強いストレスがかかります。
そんな状況だからこそ、いつもの味、食べ慣れた食品があることは大切です。
特に小さな子どもや高齢者、食事に配慮が必要な方がいる家庭では、「その人が実際に食べられるもの」を日頃から備えておくことが重要になります。
どのくらい備蓄すればいい?
食品備蓄を考える際には、まず最低3日分程度を一つの目安として準備し、可能であれば1週間程度を意識して備えておくとよいでしょう。
家族4人なら、1日3食として考えると、
4人 × 3食 × 7日 = 84食
になります。
こうして数字にすると、「意外と必要だな」と感じるかもしれません。
ただし、84食すべてを専用の非常食にする必要はありません。
パックご飯、乾麺、缶詰、レトルト食品、お菓子など、普段使っている食品も含めて考えることがローリングストックのポイントです。
一度に全部そろえようとせず、毎回の買い物で少しずつ備蓄量を増やしていきましょう。
管理栄養士が考えるローリングストックのポイント
災害時の食事というと、
「とにかくカロリーが摂れればいい」
と思われることがあります。
もちろん、生命を維持するためのエネルギーを確保することが最優先です。
しかし、避難生活が長期化すると、食事内容がご飯・パン・麺類などの炭水化物に偏りやすくなります。
そこで、ローリングストックでは**「主食・主菜・副菜」**を意識して食品を備えることをおすすめします。
① 主食になる食品
身体を動かすためのエネルギー源となる炭水化物を確保します。
・パックご飯
・アルファ化米
・乾麺
・カップ麺
・シリアル
・クラッカー
・長期保存できるパン
などがあります。
普段食べているものを中心に選びましょう。
② たんぱく質を摂れる食品
災害時に不足しやすい食品の一つが、肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく源です。
ローリングストックには、
・ツナ缶
・サバ缶
・焼き鳥缶
・大豆の水煮
・豆の缶詰
・レトルトの肉・魚料理
などを加えておくと便利です。
「ご飯+缶詰」のように組み合わせるだけでも、主食だけの食事より栄養バランスを整えやすくなります。
③ 野菜や果物も忘れずに
災害時は生鮮食品が手に入りにくくなるため、野菜や果物の摂取量が減少しやすくなります。
そこで、
・野菜ジュース
・トマト缶
・コーン缶
・乾燥野菜
・乾燥わかめ
・切り干し大根
・果物の缶詰
・ドライフルーツ
など、常温で保存できるものを備えておくとよいでしょう。
食料だけではなく「水」の備蓄も重要
食品と同じくらい重要なのが飲料水です。
水は飲むだけではありません。
調理や口腔ケアなどにも必要になります。
特に、乾麺やアルファ化米など「水を使って調理する食品」を多く備蓄している場合には、その分の水も必要です。
ローリングストックを確認するときは、
「食品はあるけれど、水が足りない」
という状態にならないよう、飲料水についても一緒に確認しましょう。
「カセットコンロ」があると食べられるものが増える
災害によってガスや電気が止まった場合、食品があっても調理できない可能性があります。
そこで家庭に備えておきたいのが、カセットコンロとカセットボンベです。
お湯を沸かせれば、
・温かいスープ
・インスタント食品
・乾麺
・レトルト食品
など、食事の選択肢が大きく広がります。
温かい食事を食べられることは、災害時の食生活を支えるうえでも大きなメリットになります。
食品だけではなく、「どうやって食べるのか」というところまで想定して備えておきましょう。
ローリングストックでよくある失敗
せっかく備蓄していても、管理方法によっては十分に活用できないことがあります。
特に注意したいのが、次のようなケースです。
① 賞味期限を把握していない
棚の奥に入れたままにすると、存在を忘れてしまいます。
賞味期限の近いものを手前に、新しく購入したものを奥に置くなど、古いものから使える仕組みを作りましょう。
② 非常時に食べないものばかり買う
「保存期間が長いから」という理由だけで選ぶのではなく、実際に家族が食べられるかどうかも重要です。
一度食べてみて、おいしいと思ったものを備蓄するのがおすすめです。
③ 主食ばかりになっている
パックご飯やカップ麺だけでは、食事が炭水化物中心になりやすくなります。
魚や肉の缶詰、野菜ジュースなども組み合わせて備えましょう。
④ 調理方法を確認していない
水やお湯が必要な食品ばかりでは、ライフラインが停止した際に困る可能性があります。
開封してそのまま食べられる食品も一定量用意しておくと安心です。
今日からできるローリングストック
「防災対策をしなければ」と思うと、準備するものが多く、ハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、ローリングストックは特別なことをする必要はありません。
まずは次回の買い物で、
「いつも買っているものを1つ多く買う」
ところから始めてみてください。
パックご飯を1パック多くする。
ツナ缶を1つ多くする。
水を1本多くする。
その積み重ねが、いざというときの備えになります。
そして月に一度程度、「備蓄チェックの日」を決めて、
・賞味期限
・水の量
・家族の人数に対して十分か
・カセットボンベなどの調理用品
・食べた食品の補充
を確認すると、ローリングストックを継続しやすくなります。
まとめ|日常の食事を「もしもの備え」に
災害は、いつ起こるかわかりません。
だからこそ、「災害が起きたら準備する」のではなく、普段の生活の中に防災を取り入れておくことが大切です。
ローリングストックなら、いつもの食品を少し多めに買い、食べながら補充することで無理なく備蓄を続けられます。
そして管理栄養士の視点から特におすすめしたいのは、単に食品の「量」を確保するだけではなく、主食・主菜・副菜を意識して備えることです。
「何日分あるか」だけでなく、
「もし今日、電気・ガス・水道が止まったら、この食品で何を食べられるだろう?」
と一度考えてみてください。
今日の買い物から1品多く。
それが、家族を守る防災対策の第一歩です。
食事や栄養についてお困りの方へ|管理栄養士による栄養相談
災害への備えは、食品をたくさん用意するだけではありません。
「家族に必要な食品は何か」
「普段の食事と備蓄をどう組み合わせるか」
「栄養バランスを考えると、何を備えておけばよいか」
など、それぞれの家庭に合わせて考えることが大切です。
管理栄養士による栄養相談
毎日の食事について、
・栄養バランスを整えたい
・何を食べればよいのかわからない
・自分や家族に合った食事について相談したい
・食生活を見直したい
・健康のために食事からできることを知りたい
といったお悩みはありませんか?
インターネットやSNSにはさまざまな栄養情報がありますが、必要な食事や栄養は、年齢や生活習慣、活動量、食生活などによって異なります。
管理栄養士が現在の食生活を確認しながら、無理なく日常生活に取り入れられる食事の工夫をご提案します。
「栄養相談というと少しハードルが高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、
「朝ごはんはこれで大丈夫?」
「最近、野菜が足りていない気がする」
「家族の食事をもう少し健康的にしたい」
といった身近な食事のお悩みでも構いません。
毎日の食事を見直すきっかけとして、お気軽にご相談ください。
防災をきっかけに、普段の食事も見直してみませんか?
ローリングストックを準備すると、「普段、自分たちはどんな食品を食べているのか」を改めて確認することになります。
これは、日頃の食生活を見直す良い機会でもあります。
災害時のための食事と、毎日の健康を支える食事。
どちらも大切なのは、自分や家族に必要な食品を知り、日頃から準備しておくことです。
管理栄養士への栄養相談をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。