近年、日本では地震や台風、豪雨などの自然災害が毎年のように発生しています。
防災というと、飲料水や懐中電灯、モバイルバッテリーなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろん、それらは命を守るために欠かせない備えです。しかし、災害による避難生活が数日から数週間続く場合には、「何を食べるか」も健康を維持するうえで非常に重要になります。
今回は管理栄養士の視点から、実際の災害現場で起こった食事や栄養の課題と、ご家庭で今日から始められる防災備蓄についてご紹介します。
実際の災害現場ではどのような食事だったのでしょうか?
東日本大震災や熊本地震、能登半島地震などでは、多くの方が長期間の避難生活を余儀なくされました。
発災直後は物流が止まり、温かい食事を用意することも難しい状況が続きます。そのため、支援物資として届きやすかったのは、おにぎりやパン、カップ麺、菓子パンなど、すぐに食べられる食品が中心でした。
これらは命をつなぐためには欠かせない食品ですが、数日から数週間続くと栄養バランスの偏りが問題になります。
実際の被災地では、次のような課題が報告されています。
- 野菜や果物が不足し、ビタミン・ミネラル・食物繊維を十分に摂れなかった
- 缶詰やインスタント食品が多くなり、塩分の摂取量が増えた
- たんぱく質不足によって筋力や体力の低下がみられた
- トイレ環境を気にして水分摂取を控え、脱水や便秘につながった
- 高齢者では低栄養やフレイルの進行が課題となった
災害時は「食べられること」が最優先ですが、避難生活が長引くほど健康を守るための栄養も重要になってきます。
防災備蓄は「量」だけでなく「栄養バランス」も大切
非常食というと、賞味期限の長い食品を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、エネルギーだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維なども意識して備えることで、避難生活中の体調管理につながります。
「何日分あるか」だけでなく、「どんな栄養が摂れるか」という視点も持って備えておくことが大切です。
管理栄養士がおすすめする備蓄食品
主食
主食は体を動かすためのエネルギー源です。
- パックご飯
- アルファ米
- レトルトのおかゆ
- オートミール
- シリアル
普段から食べ慣れているものを選ぶと、災害時のストレス軽減にもつながります。
たんぱく質
たんぱく質は筋肉や免疫機能を維持するために欠かせません。
- ツナ缶
- サバ缶
- 焼き鳥缶
- 蒸し大豆
- レトルトの豆料理
- 常温保存できる豆乳
- プロテイン
そのまま食べられるものを選ぶと便利です。
ビタミン・ミネラル・食物繊維
不足しやすい栄養素を補うために、
- 野菜ジュース
- トマトジュース
- フリーズドライ味噌汁
- 野菜スープ
- 乾燥野菜
- ドライフルーツ
- フルーツ缶詰
なども備えておくと安心です。
野菜ジュースだけで野菜不足を完全に補えるわけではありませんが、災害時にはビタミンやミネラルを補う選択肢の一つになります。
水分の備えも忘れずに
一般的には、1人あたり1日3Lを目安に、最低3日分、できれば7日分の水を備蓄することが推奨されています。
また、水は飲むだけでなく、
- 調理
- 歯磨き
- 手洗い
にも使用します。
災害時には「トイレが心配だから」と水分を我慢してしまう方もいますが、脱水や便秘のリスクが高まるため注意が必要です。
レトルトのおかゆやスープ、果物の缶詰など、水分を含む食品も備えておくと役立ちます。
「ローリングストック」で無理なく備える
「非常食を買っても賞味期限が切れてしまう」という経験はありませんか?
そこでおすすめなのがローリングストックです。
普段食べている缶詰やレトルト食品を少し多めに買い置きし、
- 古いものから食べる
- 食べた分を買い足す
という方法です。
特別な非常食だけでなく、日常の食生活をそのまま防災につなげられるため、無理なく続けやすい備蓄方法です。
管理栄養士からのワンポイントアドバイス
ご家族に乳幼児、高齢者、妊娠中の方、持病のある方、食物アレルギーのある方がいる場合は、それぞれに必要な食品を別に備えておきましょう。
また、普段服用している薬や栄養補助食品がある方は、それらも含めて確認しておくことが大切です。
防災は「特別なこと」ではありません。
普段から食べ慣れている食品を少し多めに備えることが、いざという時の安心につながります。
まとめ
災害時は「食べられること」が最優先ですが、避難生活が長引くほど、栄養バランスが健康状態を大きく左右します。
主食だけでなく、たんぱく質、ビタミン・ミネラル、水分を意識した備蓄を行うことで、体調を維持しやすくなります。
この機会に、ご家庭の備蓄食品を見直してみてはいかがでしょうか。
食事や栄養でお困りの方へ
当院では、管理栄養士による栄養相談を行っています。
日々の健康づくりや生活習慣病予防、ダイエット、スポーツ栄養はもちろん、「家族に合った食事の備え」や「防災を見据えた食品選び」についてのご相談にも対応しています。
対面だけでなくオンラインでの栄養相談も実施しておりますので、遠方にお住まいの方もお気軽にご相談ください。
参考資料
・農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
・国立健康・栄養研究所「災害時の栄養情報」
執筆者情報
吉良 優衣
管理栄養士
整骨院で栄養相談を担当し、健康づくりやスポーツ栄養を中心に、一人ひとりの生活に合わせた食事サポートを行っています。LINEやオンラインでの栄養相談、高校野球部への栄養講習などにも従事。「制限する栄養」ではなく、「続けられる食生活」を大切に、日々情報発信を行っています。