こんにちは。管理栄養士のゆいです。
勉強や仕事、運転、スポーツの前など、「もうひと頑張りしたい」というときに手に取られることの多いエナジードリンク。
コンビニや自動販売機でも気軽に購入できるため、中高生にとっても身近な飲み物になっています。
そんななか、イングランド政府は、2027年4月から16歳未満への高カフェインエナジードリンクの販売を禁止すると発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF17AHQ0X10C26A7000000
今回の記事では、
- なぜ子どもへの販売が禁止されるのか
- 日本ではどのような対応が取られているのか
- 規制基準の「1L当たり150mg超」とはどの程度なのか
について、管理栄養士の視点から解説します。
イングランドで16歳未満への販売禁止へ
イングランドでは2027年4月から、16歳未満に対する高カフェインエナジードリンクの販売が禁止される予定です。
対象となるのは、カフェイン濃度が1L当たり150mgを超えるエナジードリンクです。
店舗での販売だけでなく、オンライン販売や自動販売機なども対象になるとされています。コーヒーやお茶など、もともとカフェインを含む一般的な飲料は今回の規制対象から除外されます。
規制の背景には、子どもの睡眠や心身の健康、学習への影響に対する懸念があります。
エナジードリンクを飲むと、一時的に眠気が軽くなったり、集中しやすくなったように感じたりすることがあります。
しかし、カフェインによって疲労そのものが回復するわけではありません。
夕方や夜に飲むことで寝つきが悪くなれば、
「疲れているから飲む」
「夜に眠れなくなる」
「翌日さらに眠くなる」
「またエナジードリンクを飲む」
という悪循環につながる可能性があります。
「1L当たり150mg」とは、どのくらい?
今回のニュースを見て、
「1Lに150mgなら、1本に150mg入っていなければ大丈夫なのでは?」
と思った方もいるかもしれません。
しかし、1L当たり150mgという数字は、1本に含まれる総量ではなく、飲料の濃度を示す基準です。
1Lは1,000mLなので、
1L当たり150mg=100mL当たり15mg
となります。
この濃度の飲み物に含まれるカフェイン量を、一般的な容器のサイズに換算すると次のようになります。
| 内容量 | カフェイン量 |
|---|---|
| 250mL | 37.5mg |
| 355mL | 約53mg |
| 500mL | 75mg |
つまり、250mLの商品なら、1本に含まれるカフェインが37.5mgを超えると、1L当たり150mgという濃度を上回る計算になります。
「1本に150mg以上含まれる商品だけが規制される」という意味ではありません。
日本で売られているエナジードリンクでは?
実際に、日本で販売されている代表的なエナジードリンクと比べてみましょう。
レッドブルの場合
レッドブル・エナジードリンクの250mL缶には、約80mgのカフェインが含まれています。
1L当たりに換算すると、
80mg÷250mL×1,000=320mg/L
です。
これは、今回のイングランドの基準である150mg/Lの、約2.1倍に相当します。
モンスターエナジーの場合
モンスターエナジーの500mL缶は、100mL当たり40mgのカフェインを含んでいます。
500mLを1本飲むと、カフェイン量は合計200mgです。
濃度に換算すると、
40mg×10=400mg/L
となり、イングランドの基準の約2.7倍です。
| 飲料の例 | 内容量 | 1本当たりのカフェイン | 1L当たりに換算 |
|---|---|---|---|
| 規制基準相当の飲料 | 250mL | 37.5mg | 150mg/L |
| レッドブル | 250mL | 約80mg | 約320mg/L |
| モンスターエナジー | 500mL | 200mg | 400mg/L |
このように、今回の規制基準は、極端に特殊な商品だけを対象とした数字ではありません。
日本のコンビニなどで一般的に販売されているエナジードリンクの多くが、濃度としては基準を上回る可能性があります。
なお、商品の内容量や成分は変更されることがあるため、実際に飲む際は商品ラベルを確認してください。
コーヒーのほうがカフェイン濃度は高い?
ここまで読むと、
「コーヒーにもカフェインが多く含まれているのでは?」
と思うかもしれません。
厚生労働省が紹介している数値では、抽出したコーヒーのカフェイン濃度は、100mL当たり約60mgです。
1L当たりに換算すると、約600mgになります。
濃度だけで見れば、イングランドの基準である150mg/Lを大きく上回っています。
しかし、今回の規制は、すべてのカフェイン飲料を一律に禁止するものではありません。対象は高カフェインのエナジードリンクであり、コーヒーやお茶は除外されています。
つまり、150mg/Lは、「この量を超えたら健康被害が起こる」という安全性の境界線ではなく、販売規制の対象となる商品を分類するための基準です。
「150mg以上は危険」「149mgなら安全」という意味ではない点には注意が必要です。
日本では子どもへの販売制限はある?
日本では現在、エナジードリンクについて、全国一律で「16歳未満には販売してはいけない」とする年齢制限は設けられていません。
コンビニやスーパー、自動販売機などで、子どもでも購入できるのが現状です。
一方で、消費者庁や厚生労働省は、カフェインを多く含む清涼飲料水の過剰摂取について注意を呼びかけています。
消費者庁は、特に注意が必要な人として、
- 子ども
- 妊婦
- 授乳中の方
- カフェインに敏感な方
を挙げています。
また、エナジードリンクには、1本でコーヒー2~3杯分に相当するカフェインを含む商品もあるため、1日に何本も飲まないよう注意を促しています。
日本では、子どもへの販売を法律で禁止するというよりも、商品表示を確認し、消費者や保護者が飲用を判断する形になっています。
日本には自主的な表示ルールがある
日本では、全国清涼飲料連合会が、カフェインを多く添加した清涼飲料水の表示に関する自主ガイドラインを設けています。
対象となるのは、食品添加物としてカフェインを加えた清涼飲料水のうち、100mL当たり21mg以上のカフェインを含む商品です。
対象商品には、
- 1本当たりのカフェイン量
- 適量の飲用を促す表示
- 子どもや妊婦、授乳中の方、カフェインに敏感な方は飲用を控える旨
などを表示することが求められています。
イングランドの販売規制基準は100mL当たり15mg超、日本の自主表示基準は100mL当たり21mg以上です。
ただし、この2つは目的が異なります。
イングランドの基準は、16歳未満への販売を禁止するための基準です。
日本の基準は、対象商品にカフェイン量や注意事項を表示するための自主的な基準です。
日本の基準を超えていても、子どもへの販売そのものが禁止されるわけではありません。
なぜ子どもは特に注意が必要なの?
カフェインの影響には個人差がありますが、子どもは大人より体格が小さいため、同じ1本を飲んでも、体重1kg当たりの摂取量が多くなります。
例えば、カフェイン80mgを摂取した場合、
- 体重60kgでは、体重1kg当たり約1.3mg
- 体重40kgでは、体重1kg当たり2mg
- 体重30kgでは、体重1kg当たり約2.7mg
となります。
厚生労働省は、海外機関の目安として、13歳以上の青少年については、1日当たり体重1kg当たり2.5mgを超えないようにする考え方を紹介しています。
この数字に当てはめると、体重30kgの人がカフェイン80mgを摂ると、体重1kg当たり約2.7mgになります。
つまり、体格によっては、一般的なエナジードリンクを1本飲むだけでも、この目安を超える可能性があります。
ただし、これは日本が定めた一律の上限量ではありません。
カフェインは感受性の個人差が大きく、日本を含め、国際的にもすべての人に共通する一日摂取許容量は設定されていません。
「目安以内なら必ず安全」というわけではなく、少ない量でも動悸や不眠、不安感などが出る人もいます。
カフェインを摂りすぎると起こること
カフェインを過剰に摂取すると、
- めまい
- 心拍数の増加、動悸
- 興奮
- 不安感
- 手の震え
- 不眠
- 下痢
- 吐き気
などが起こる可能性があります。
特に注意したいのが、エナジードリンク以外の食品や医薬品との重複です。
朝にコーヒーを飲み、昼にお茶を飲み、夕方にエナジードリンクを飲むと、それぞれは1本、1杯でも、1日全体のカフェイン量は多くなります。
また、眠気防止薬や一部の鎮痛薬など、カフェインを含む医薬品と一緒に摂ると、気づかないうちに摂取量が増える可能性があります。
エナジードリンクだけを見るのではなく、その日に摂ったカフェインの合計量を考えることが大切です。
エナジードリンクは水分補給には向かない
エナジードリンクは、水分補給を目的とした飲み物ではありません。
特に、暑い日の部活動やスポーツ中に、
「元気が出そうだから」
「汗をかいたから」
「スポーツドリンクと同じようなものだから」
という理由で飲むのはおすすめできません。
運動中や暑い環境での水分補給には、基本的には水や麦茶、状況に応じてスポーツドリンクなどを選びます。
エナジードリンクを飲んでも、睡眠不足や食事不足、脱水、疲労が解消されるわけではありません。身体が休息を求めているときに、カフェインで一時的に眠気を感じにくくしているだけの場合もあります。
大人なら安心というわけではない
今回の販売規制は16歳未満を対象としていますが、大人なら何本飲んでも問題ないという意味ではありません。
消費者庁が紹介している海外の目安では、健康な成人のカフェイン摂取量は、1日最大400mgとされています。
例えば、カフェイン200mgを含むエナジードリンクを2本飲むと、それだけで400mgになります。
さらにコーヒーやお茶、カフェインを含む医薬品などを摂れば、合計量はさらに増えます。
また、400mg以内であっても、夕方や夜に多く摂れば睡眠に影響する可能性があります。
大切なのは、上限だけを意識するのではなく、
- 1本当たりのカフェイン量
- 1日に飲む本数
- コーヒーやお茶との合計量
- 飲む時間
- 飲んだ後の体調や睡眠
を確認することです。
管理栄養士として伝えたいこと
今回のニュースは、単純に「カフェインは危険」「エナジードリンクは絶対に飲んではいけない」と伝えるものではありません。
注目したいのは、子どもが高濃度のカフェインを含む飲み物を、身近な場所で簡単に購入できる環境をどう考えるかという点です。
日本では現在、イングランドのような全国一律の年齢制限はありません。
だからこそ、保護者や学校、スポーツ指導者など、周囲の大人が商品表示を確認し、子どもにとって本当に必要な飲み物なのかを考えることが重要です。
エナジードリンクを飲まなければ乗り切れないほど眠い、疲れているという場合には、飲み物を選ぶ前に、
- 睡眠時間は足りているか
- 食事を抜いていないか
- 水分不足になっていないか
- 無理なスケジュールが続いていないか
を見直す必要があります。
眠気を一時的に隠すことと、身体を回復させることは別です。
まとめ
イングランドでは2027年4月から、カフェイン濃度が1L当たり150mgを超える高カフェインエナジードリンクについて、16歳未満への販売が禁止される予定です。
1L当たり150mgは、100mL当たりでは15mgです。
250mLの飲料なら37.5mg、500mLなら75mgを超えると、この濃度基準を上回ります。
日本で一般的に販売されているエナジードリンクには、250mLで約80mg、500mLで200mgなど、今回の基準を大きく上回る商品もあります。
日本では子どもへの一律の販売制限はありませんが、消費者庁などは、子どもや妊婦、授乳中の方、カフェインに敏感な方に対し、カフェインを多く含む飲料の摂取を控えるよう注意を呼びかけています。
「売っているから安全」
「1本だけなら誰でも問題ない」
とは限りません。
カフェイン量だけでなく、年齢や体格、飲む時間、その日のほかの飲み物との組み合わせまで考え、上手に付き合っていきましょう。
栄養について相談したい方へ
「疲れやすくて、ついエナジードリンクに頼ってしまう」
「子どもの部活動中の飲み物について相談したい」
「食事や睡眠を含めて生活習慣を整えたい」
といったお悩みがある方は、LINEで管理栄養士による栄養相談を受け付けています。
食事内容や生活スタイルを伺いながら、一人ひとりに合わせた無理のない方法をご提案します。
執筆者情報
吉良優衣
管理栄養士
健康な方への栄養相談を通して、より健康に、生き生きと過ごしていただくお手伝いをしたいと考え、現在の会社に入社。
整骨院の店舗およびLINEで栄養相談を実施しているほか、高校野球部の選手を対象とした栄養講習など、講習会活動にも従事しています。